「だめよ、デイビッド!」(さく:デイビッド・シャノン、やく:小川仁央、評論社)

 「デイビッドのママはいつもいう…だめよ、デイビッド!って」。主人公のデイビッドは、実にいろいろとやらかします。泥だらけの体で家に入ったり、裸で外に飛び出したり。とうとう最後はおうちの中で野球をして、花瓶を割ってしまいます。

 そこでようやく、涙を流して反省。ママは「ほうらわかったでしょ、デイビッド!」「こっちにおいで」とやさしく呼び寄せます。ママに「よしよし、デイビッド…だいすきよ!」と抱きしめられているデイビッドは、何とも安心した愛らしい表情を見せます。

 読みながら、親である自分も、わが子に対してすぐ「だめよ!」って言っていたなあと反省し、背中がむずがゆくなりました。

 次作の「デイビッドがっこうへいく」では学校でも先生に「いけません!」と叱られっぱなし。3作目の「デイビッドがやっちゃった」では、いたずらをするデイビッドがひたすら言い訳をしますが、最後は「ごめんなさい」を言えて、ママに頭をなでられ「ママ、だいすき」と言いつつ眠りにつきます。

 デイビッドの行動は衝動的だったり、多動だったりします。2作目の表紙にデイビッドが書いた英文があり、単語のつづりは間違いがあります。本文の文字も乱暴なタッチの手書きで、まるでデイビッド本人が書いたかのようです。

「だめよ、デイビッド!」の一場面
 このような子どもは家庭や学校で失敗経験を積み重ね、叱られることも多く、自己肯定感を下げてしまいがちです。3作目にある作者の前書きには「言い訳しているデイビッドが本当に言いたいのは、『ぼく、しっぱいしたくないんだ』ということ」とあり、ドキッとします。主人公と作者の名前が同じですから、作者の本音が垣間見えた気がします。

 いずれの作品もデイビッドは母親や先生に褒められたり、認められたりするハッピーエンドで、ホッとします。読者の皆さんはお子さんの良くない「行為」を叱ることはあっても、それ以上にいいところを認め、「ほめるで終わる」関わりを意識してみてください。

 そしてしっかりお子さんの名前を呼んで、行為を具体的にほめて「ママ/パパもうれしかったよ」と伝えてあげるといいでしょう。

 

みずうち・とよかず 岡山市出身。3児の父。島根県立大人間文化学部臨床発達心理学研究室准教授、公認心理師。発達障害の子どもや家族の相談支援、乳幼児健診の心理相談員、ダウン症、自閉スペクトラム症などの当事者と家族団体の支援などに長く従事する。現在松江市を中心とした障害や病気のある若者当事者グループ「オロチぼたんの会」の活動を監修。著書に「身近なコトから理解する インクルーシブ社会の障害学入門ー出雲神話からSDGsまでー」。