準々決勝の神村学園戦で声を張り上げる大社の大応援団=19日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場
準々決勝の神村学園戦で声を張り上げる大社の大応援団=19日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場

 言葉にできないことがある。意を尽くせず薄っぺらくなったり飾り過ぎたり。夏の甲子園で8強入りし、大勢の心を動かした大社高校の快進撃がそうではないか。

 それを見事に表現したのが、3回戦で早稲田実業(西東京)との延長戦を制した際、アナウンサーが発した「神々の国からやって来た少年たちの快進撃はまだ続きます!」という言葉。〝名実況〟として心を捉えた。

 大社は神話のふるさと出雲市にあり、校歌に<杵築の宮(出雲大社)を仰ぎみる>とある。その地から来た選手たちの快進撃、という客観的に見れば淡々とした事実だが、地道な練習を礎に一人一人の力がつながって生まれたプレーは、確かに超越した「何か」があり、感動を呼んだ。その表現し難いまばゆさが「神々の国からやって来た」の実況に込められていたから、はまったのだろう。

 アルプススタンドで後押しした約3千人の応援団の大声援も注目を集めた。準々決勝で神村学園(鹿児島)に敗れたが、相手の校歌が流れると自然と手拍子が起こった。「いい試合をありがとう、次も頑張って」の思いから。珍しい光景に神村学園の監督も「大社高校さんの分まで絶対勝たないと」と感じたという。

 卒業生として2回戦と準々決勝に駆け付け、アルプスでの応援に加わった。あの熱い時間と空間に身を置けた幸せを何と言えばいいのか。言葉にできない感情で今も涙があふれる。(衣)

【募集】「ありがとう大社ナイン」特集紙面メッセージを募集します 23日まで