8月最終週の『サザエさん』はカツオ君が夏休みの宿題に追われる話が定番。マスオ兄さんに泣きつき、波平さんに叱られながらも一家総出で仕上げる。知恵を働かせ、帳尻を合わせる要領の良さはさすがというほかない。
生成人工知能(AI)の登場でお決まりの場面が見られなくなるかもしれない。「チャットGPT」に読書感想文の執筆を命令すると、それなりの文章が完成する。プロンプトと呼ばれる指示文を明確にすれば、小学生らしい表現も可能だ。
山陰両県の学校が生成AIを使った宿題のコピペ対策に腐心している。一部は使用を禁じているが、生成AIで作成したかどうか完全に見分ける方法はないという。楽をしたいのが人間の性(さが)。宿題本来の在り方を見直す時期に来ている。
国内屈指の「成績が伸びる塾」を経営する富永雄輔さんは、著書『AIに潰(つぶ)されない「頭のいい子」の育て方』でAI使用禁止は意味がないと説く。「立派な感想文の提出が大事ではなく、本を読み、考えるのが楽しいと思える子を育てる」「チャットGPTで価値を創り出そうと思う子を育てる」。教育界は実社会よりずっと速く変革が進んでいるとし、大人に価値観の転換を求める。
ちなみに富永さんがAI時代に伸びる子どもに必要な要素の一番に挙げたのが「愛嬌(あいきょう)と人懐っこさ」だった。ひょっとするとカツオ君は「AI時代の寵児(ちょうじ)」になるかもしれない。(玉)