
「なっちゃんの おうちに あかちゃんが やってきました。なっちゃんは おねえちゃんになりました。」
お出かけの時、ママと手をつなぎたくても、ママは赤ちゃんを抱っこしているのでつなげません。ママのスカートを「ちょっとだけ」つかんで我慢しました。
パジャマに着替える時、これまではママにボタンを止めてもらっていたけど、ママは赤ちゃんを寝かせるのに精いっぱい。全部はできなかったけど、自分で「ちょっとだけ」止めることができました。
公園では、ブランコをいつもママが押してくれましたが、今はお願いできません。自分で頑張ってこいでみたら「ちょっとだけ」ブランコを揺らすことができました。
なっちゃんはママに甘えたい気持ちをこらえて、他にも、これまでママにやってもらっていたことに、自分1人でチャレンジしていきます。

おねえちゃんになったからと1人で頑張るなっちゃんも、やがて疲れて眠たくなり、とうとうママに「ちょっとだけ」抱っこしてほしいとお願いします。甘えたい気持ちのなっちゃんに、ママはどのように応じるのでしょう?
ママに甘えたいけど、おねえちゃんになろうと頑張ろうともする、そんななっちゃんの心の葛藤と、「ちょっとだけ」を積み重ねて確実に成長していく姿が、ママの深い愛情と共に描かれます。
私が尊敬する、ある小児科の先生は、病気で来院した子と保護者だけでなく、そのきょうだい児に対しても、必ず温かいまなざしとともに「こんにちは」「バイバーイ」と声をかけておられます。この絵本は、その先生に紹介してもらったものです。障害児の心理臨床を研究する私に先生は、赤ちゃんもママも、そしてなっちゃんも、家族みんなが大事な主役なんだよと、教えてくださったのだと思っています。
私はこの絵本を読んで、最初は切なくキュンと胸が締め付けられ、最後にはほっこり幸せな気持ちになりました。
世界中の「なっちゃん」が、「いっぱい」抱きしめてもらえますように。