
この絵本はベンという耳の不自由な男の子のお話です。ベンのありのままの日常や心情が的確に、シンプルな親しみやすいイラストで明るく描かれています。
聴覚障害のある人は誰でも手話が理解できると思われがちですが、手話利用者は聴覚障害者全体の14%ほどです。また、補聴器を付けても音の種類や環境によって有効性は違い、補聴器による聞こえの改善には限界があります。
「手話を知らないし、どう話そう。筆談がいいのかな」と、聴覚障害のある人への接し方に戸惑うかもしれませんね。
「だいじなことは、聴こえ方がどうのこうのととらわれずに愛情をもって意志を伝え合うことです。とにかく話しかけてみましょう。さあ、語りかけてください!」
作者のブルーナさんとジョーンズさんは巻末に「お母さん、お父さんへ」と題してそう記しています。
島根県立大では聴覚障害のある児玉湖春さんが、特別支援学校の先生を目標に学んでいます。彼女がコメントを寄せてくれました。
☆☆☆
小さい頃によく読んだこの絵本は「ただ、聴こえない、聴こえにくいだけで、他のみんなとほとんど変わらないんだよ」というメッセージが込められているのではないかと、感じていました。同時に「ベンはみんなと変わらない子どもなんだよ。でも、ゆっくりはっきりと口の動きが見えるように話しかけるといいんだよ」と、聴覚障害者へのやさしい寄り添い方も紹介してくれています。
「まずはベンのことを知ることから始めようよ」と気づかせてくれる絵本でもあると思います。障害への理解以上に、その子の好きなもの、得意なことをたくさん見つけてほしいです。
聴覚障害の有無に関わらず、子どもから大人まで読んでもらいたいです。友だちに早口や横を向いた状態で話しかけられたとき、補聴器を付けたときなど、ベンの表情は異なります。そこに注目して、表情の意味を考えながら読むと、もっと楽しめると思います。
☆☆☆
聴覚障害者のコミュニケーション方法には、手話、指文字、口話、補聴器、筆談など、いろいろな方法があります。
お子さんと、この絵本をきっかけに、筆談やジェスチャーで伝えあう遊びをしたり、手話について調べてみたりすると良いですね。