「かっくん どうして ボクだけ しかくいの?」(クリスチャン・メルベイユ/文、ジョス・ゴフィン/絵、乙武洋匡/訳、講談社)


 「まんまるかぞくは、みんなが まんまる。ふとっちょくんも おちびさんも、みんなが まんまる。

「かっくん どうして ボクだけ しかくいの?」(クリスチャン・メルベイユ/文、ジョス・ゴフィン/絵、乙武洋匡/訳、講談社)

 そんな家族の下に、ただ1人、四角い形をした「かっくん」が誕生します。

 「きみは みんなと 形が ちがうけど、おとうさんと おかあさんは きみの ことが だいすきだよ」とお父さんとお母さんは優しく言いました。しかし、かっくんはまんまるな他の子どもたちから、仲間外れにされてしまいます。

 「ボク…どうして、しかくいんだろう。ほかのみんなは、まんまるなのに…。」

 

「かっくん どうして ボクだけ しかくいの?」(クリスチャン・メルベイユ/文、ジョス・ゴフィン/絵、乙武洋匡/訳、講談社)

 でも、あることをきっかけに、みんな仲良しになります。その出来事とは?

 作品の原題は「Little Cube and the All-rounders」。作者はベルギーの作家で、日本語訳は『五体不満足』でおなじみの乙武洋匡さんです。

 乙武さんはユーチューブで、小学校での思い出を話していました。他の子と同じようにびしょぬれになって、雑巾で床の拭き掃除をしていると、担任の先生は「みんなと同じことをしなくても、自分の得意な別のことでクラスに貢献したらいいよ」と、掃除の時間は得意なワープロでの文書作成を任せたそうです。

 このエピソードは多様性を理解し、誰もが特異(ユニーク)を尊重され、それぞれの得意によって支え合う、インクルーシブ社会のあり方を教えてくれます。

 幼児期から学齢期に車いすユーザーや補聴器を装用している人、肌や髪の色が異なる人などに出会い、世の中には自分とは違う人がいると気づくことは大切です。ただ、違いを単に「○○がない人」「○○ができない人」とネガティブに捉えて終わるのではなく、多様な価値、つまり特異(ユニーク)と捉え、そして特異を得意へと価値づけていくために、周りの大人が意識して子どもに関わることが必要です。
 
「いろいろ いるよ。まんまる、ふとっちょ、しかくに おちび。みんな みんな ちがうけど、みんなで みんなで あそぼうよ」という最後の一文を、ぜひお子さんと一緒に味わってみてください。

 

みずうち・とよかず 岡山市出身。3児の父。島根県立大人間文化学部臨床発達心理学研究室准教授、公認心理師。発達障害の子どもや家族の相談支援、乳幼児健診の心理相談員、ダウン症、自閉スペクトラム症などの当事者と家族団体の支援などに長く従事する。現在松江市を中心とした障害や病気のある若者当事者グループ「オロチぼたんの会」の活動を監修。著書に「身近なコトから理解する インクルーシブ社会の障害学入門ー出雲神話からSDGsまでー」。