「隠れトランプ」という言葉が世に出たのが、2016年の米大統領選だった。初の女性大統領を目指す民主党候補のヒラリー・クリントン氏と、共和党候補のドナルド・トランプ氏が争った選挙だ▼事前の世論調査の多くがクリントン氏の優位を伝えていたにもかかわらず、トランプ氏が予想外の勝利を収めた。その要因に挙げられたのが「隠れトランプ」の存在。過激な発言を繰り返すトランプ氏を支持していることを他人に隠し、世論調査にも回答していなかった多くの“隠れ支持者”が投票したとされる▼20年の選挙で再選を果たせず、返り咲きによる政権奪還を狙うトランプ氏と、初の女性大統領を目指す民主党候補のカマラ・ハリス氏が互角の戦いを繰り広げた今回の大統領選。同志社大大学院の三牧聖子准教授(米政治・外交)に予想を聞くと、「以前に比べてトランプ支持を公然と言える環境になった」としつつ、潜在的な“隠れ支持者”が多ければトランプ氏が地滑り的に勝利する可能性も示唆した▼結果は勝敗を決するとされた激戦7州のうち、両陣営が最も重視した東部ペンシルベニアや南部のジョージア、ノースカロライナなどを制したトランプ氏が「勝利宣言」した。「隠れトランプ」が機能したのか▼土壇場まで結果が予測できないのはスリリングだ。ただ世論調査の数字が選挙結果に反映されないのは、マスコミ泣かせでもある。(健)