くしゃみが止まらない。頭も痛くなり、熱を測ると39度あった。嫌な予感がした。病院での検査の結果は新型コロナウイルス。解熱剤をもらい、5日間の自宅での隔離生活が始まった。10月下旬、世の中は衆院選最終盤を迎えていた。
仕事に復帰した10月末、他のウイルスが地域を襲った。14年ぶりに高病原性鳥インフルエンザが島根県内の養鶏場で発生した。身近に潜み、生命と社会を脅かす感染症。人類は長い歴史の中で闘い続け、乗り越えてきた。「見えない敵」と「共存」していくしかない。そう思った。
政界では自民党の派閥裏金事件を受けた「政治とカネ」というウイルスがまん延する。石破茂首相は戦後最短で衆院解散を決断したが、与党は過半数割れの大敗。非公認候補が代表を務める党支部への政党交付金2千万円支給が決め手になった。国民の怒りという熱を冷ますことはできなかった。
「党内野党」として物言う姿勢を貫いてきた石破首相。かつて参院選で惨敗した安倍晋三首相が続投の意向を示すと、公然と「国民への説明がつかない」と退陣を迫った。その言葉は今、自身に向かう。
衆院選後に政権継続に意欲を示した上で語った「心底から反省し、生まれ変わっていかなければならない」との言葉。自身の心という見えない敵と闘っているのだろう。党内に配慮すると、世論が離れる。共存はできない。もう腹をくくるしかない。(添)