景気のバロメーターといわれる税収は、景気を調整する役割も兼ねている。景気が良くなって世の中の所得が増えれば税収は増加するが、同時に所得にかかる税負担が増えることで出費を抑制して景況の過熱を防ぐ。逆に景気が悪くなれば、税負担も減って経済の悪化を抑える。国民にとって気が重い納税が、経済活動を自動的に安定化に導く▼2020年度の国の税収が約61兆円と過去最高になった。コロナ禍で経済が打撃を受け、税収も大幅に落ち込むかと思いきや、あのバブル期をも上回る実入りが実現するとは▼運輸や観光の納税額が落ち込む一方、巣ごもり需要に沸く通信や電機などが大幅に伸び、業種によって業績格差が広がるK字回復を裏付けた。19年10月に税率を上げた消費税が年間を通して「フル稼働」したのも大きい▼大企業を中心に法人税は順調に伸び、株高を反映して株式売却益への課税も増えた。コロナ禍で明日も分からない飲食店などを尻目に儲(もう)かるところは儲け、富の偏在を道連れに税収バブル超え。サラリーマン給与からの税収は減って、こちらは税収版給与減。バブル超えどころか「給与不況」の色が濃い▼一方で20年度の新規国債発行額は、コロナ対策を中心に過去最高の112兆円と前年度の3倍を超え、同じ過去最高でも借金の目方は税収の2倍近い。借金の増え方は尋常ではないが、命の重さに代えられない。(前)