2024年7月にJR米子駅で行われた実証実験で、列車内に自転車を持ち込む参加者(資料)
2024年7月にJR米子駅で行われた実証実験で、列車内に自転車を持ち込む参加者(資料)

 山陰自動車道が鳥取県中部から島根県西部までの約150キロでつながった。米子空港はコロナ禍で紆余(うよ)曲折がありつつも、ソウル、香港に続いて台湾便の定期就航にめどが立ち、山陰の国際空港として存在感が増した。昨今、島根、鳥取両県の県境を意識することはほとんどなくなったものの、時折「壁」が現れる。

 小さな話ではあるが、JR米子-鳥取駅間で来月5日に通年運行が始まる「サイクルトレイン」のことだ。読んで字のごとく、自転車を積んで走る列車。一畑電車で既に実用化されており、JRでも待望のデビューとなる。

 「島根側でも」と願う人はいるだろう。ただ、利用者の要望が足りないのか、サイクリングをインバウンド(訪日客)誘致など観光振興に役立てようという行政の熱量が鳥取側に比べて低いのか、現時点では残念ながら“断線”している。

 サイクリングロードといえば、国内屈指のルートを持つ瀬戸内側の広島から中国山地を越えて島根を経由し、鳥取へと至る「しまなみ」「やまなみ」「うみなみ」の三つのコースの制覇が魅力的だ。とはいえ片道を走り切り、同じ道を引き返すのはつらい。帰りは適宜列車で移動できるようになると、挑戦者が増えるだろう。

 自転車を列車に積む人は限定的か。JRにとって赤字解消に至るほどのメリットはないだろうが、島根側のサービス向上で木次線振興につなげたいとの夢も抱く。(万)