安野光雅さんの作品を鑑賞する米国の絵本作家エリック・カールさん(右)=2004年3月、島根県津和野町後田の安野光雅美術館
安野光雅さんの作品を鑑賞する米国の絵本作家エリック・カールさん(右)=2004年3月、島根県津和野町後田の安野光雅美術館

 日本では毎年、多くの絵本が生まれている。国立国会図書館国際子ども図書館の分野別集計では、2022年に日本で出版された絵本は2千タイトル超。世界有数の絵本大国ともいわれる。

 子どもの頃に親しみ、心に残っている絵本がある。天まで伸びる木や巨人が登場する『ジャックと豆の木』、イソップ童話の『北風と太陽』『アリとキリギリス』『ウサギとカメ』…。物語の意味するところは分からないながら、それぞれの独特な世界に引き込まれた。

 きょうは「国際子どもの本の日」。デンマークの童話作家アンデルセンの誕生日にちなみ、子どもの本を通した国際理解を進めようと、国際児童図書評議会が1967年に制定した。提唱者のイエラ・レップマンは、世界で初めての国際児童図書館(ミュンヘン)を創設。子どもの本を通じた平和を目指して取り組んだ。

 21年前、『はらぺこあおむし』で知られる米国の絵本作家エリック・カールさんが島根県津和野町の安野光雅美術館を訪れたのに合わせて取材した。「人生で一番素晴らしい子ども時代をなるべく長く楽しんでほしい」。そう話した優しいまなざしが印象に残る。

 絵本作家が願うのは、平和の中での子どもたちの健やかな成長だろう。だが、今の世界には長引く戦争の犠牲になり、平穏な日常を奪われた人たちがいる。将来を担う子どもたちの目に映るのが争いの炎でよいはずはない。(彦)