見頃を迎えた松江城山公園の桜=3日午後
見頃を迎えた松江城山公園の桜=3日午後

 松江城山公園の桜は見頃を迎えた。きょうは周辺で松江武者行列も開催される。うららかな陽気に誘われ、花見客に加え、大勢の観光客でにぎわいそうだ。

 <世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし>。平安時代前期の歌人在原業平はこう詠んだ。世の中に桜が全くなければ、「咲いたかな」「もう散るのかな」などと思い煩うことなく穏やかに過ごせただろうに、という意味。今昔を問わず、桜は人の心を惑わせる。

 にわかに信じがたいが、「たえて桜のなかりけば」という時代が来るかもしれないという。春を彩るソメイヨシノは花芽が前年の夏にできた後、成長を止めて「休眠」する。そして冬の厳しい寒さに数十日間さらされると眠りから目覚める。この「休眠打破」を経て花を開かせる。

 ところが、寒い時期が一定期間ないと“寝ぼけたまま”の休眠状態が続き、花が咲かないそうだ。もともと冬場も気温が高い沖縄ではソメイヨシノは咲かないが、地球温暖化の進展によって開花の南限が北に上昇。将来的に鹿児島など南九州でも、咲かなくなる懸念があるらしい。

 沖縄気象台が桜開花の基準にするヒカンザクラをはじめ、日本で咲く桜には400種類以上の品種があるという。それでもソメイヨシノがない花見は何だか物足りない。「春眠暁を覚えず」の今頃。人間も夢うつつは心地よいが、休眠を打破しないと花開かないか。(健)