1年前のゴールデンウイークに病気で1週間入院した。初めての入院生活の不安を和らげてくれたのは看護師だった。定期巡回での優しい言葉、夜中に点滴が痛くて枕元のナースコールを押すと駆け付けてくれた。命を守る仕事の過酷さも知った。病床が埋まる病棟でナースコールが鳴り続けていたのを覚えている。
医療現場で看護師不足が深刻化している。島根県の調査で2023年度の離職率は8・2%。過去10年間で最も高く、他職種と比べて低い給与などが理由だ。採用にも苦慮し、病床数を減らすなど医療提供にも影響が及ぶ。
少子高齢化の進行で増える医療ニーズ。看護師の役割が増す一方、国の推計で25年に最大27万人が不足する。看護師だけではない。介護施設長の友人は人手が足りないと言っていた。どの仕事も同じだが、責任感ややりがいで支えられているといつか組織は崩壊する。対策は待ったなしだ。
政治はどう向き合うのか。石破茂首相は2月、医療や介護、福祉関係者との車座対話で「さらなる賃上げや生きがいを確保するために努力する」と言及した。夏の参院選でも大きな争点になる。
コロナ禍で注目を集めた社会の機能を現場で支える「エッセンシャルワーカー」。日常の当たり前が当たり前でなくなると地域の維持に直結する。1年前、感謝を十分に伝えられず、何が必要なのかを直接聞かなかったことを後悔している。(添)