東京都内の部屋で一人、五輪専用サイトをスマホで開き「行け、行け」と連呼した。小さな画面の中で、陸上男子3000メートル障害決勝に出場した浜田市出身の三浦龍司選手が外国人選手を相手に躍動していた▼筆者が浜田で取材した当時は中学生だったが、実力は抜きん出ていた。彼が覚えているはずもないだろうが、記事に写真が残るあどけない少年がめきめき実力をつけ、日本勢初の7位入賞を成し遂げた快挙に感動で震えた▼無観客かつ取材制限により、すぐそこで行われているのに遠い五輪。開催に否定的な意見も多い中、取材した山陰出身のボランティアたちは「石を投げられるんじゃないか」と不安を口にしつつ、「でも参加して良かった」と晴れやかな表情を浮かべた。会場の様子などを聞きながら、生の五輪を少しだけ感じた▼閉幕から5日。再びコロナ一色だ。都内の友人からも『コロナかかった』と連絡が。『強めの風邪って感じ。頭痛と寒け。味覚は無事』。これまで知人に感染者はいなかったが、忍び寄ってきた。来週には都内で1日1万人の新規陽性者が出る予測もある。山陰でも増えてきたように、全国で爆発的に感染が拡大し、先は見えない▼五輪期間中、開催の賛否を頭に置きつつ、熱戦が、1年半以上も都内にとどまる筆者の不安を紛らわせてくれた。「祭り」が終わった今、のしかかってくる現実が余計重く感じる。(築)