新型コロナウイルス患者の健康状態を観察するのに有効とされる医療器具のパルスオキシメーター。指に取り付けたセンサーが脈拍数や血中酸素濃度を常時読み取る。筆者も先日まで、別の病気で入院中に使っており、異常な数値が出ると、看護師がすぐに病室へ飛んできた▼政府はコロナの入院対象を、重症や重症化リスクのある中等症に限定。自宅療養への健康観察強化で乗り切ろうとしている。具体的にはパルスオキシメーターの配布を増やし、往診する医師の診療報酬を手厚くするというが、うまくいくのか▼国の介護政策が在宅へとかじを切り、地域医療を支える開業医の役割は増すばかり。山陰でも訪問医が患者の体調管理はもちろん、人生の終わりをどう迎えるかという課題に誠実に向き合う▼彼らの話を聞くにつけ、患者との接し方は千差万別と痛感する。本人の性格やこれまでの人生、病状によって対応は異なり、マニュアルなど存在しない。そんな大変な仕事を担う人たちに、コロナ対応をどこまで求められるのか。急変時の病院との連携は担保できるのか。パルスオキシメーターを付けたにしても誰が数値を監視するのか。疑問は次々と湧く▼国は入院制限を「あくまで自治体による選択肢の一つ」とする。肝心なのは入院であれ自宅であれ、容体の急変に対応できる中で養生すること。誰一人取りこぼされることのないよう願う。(示)