有機栽培の水田を案内する「弥守の会」の清水康彦代表(右)=7日、浜田市弥栄町
有機栽培の水田を案内する「弥守の会」の清水康彦代表(右)=7日、浜田市弥栄町

 浜田市の中山間地域に位置する弥栄地区。有機米栽培の現場を訪ねると、勢いよく伸びた稲穂の横で草が生い茂っていた。「除草はしていない。雑草に負けない稲を育てれば、除草は必要ない。その分、育苗は苦労したが」。有機農業の担い手が集まり10年前に組織された「弥守(やもり)の会」の清水康彦代表(60)が教えてくれた。

 11人いる会の農業者のうち10人がIターン者。富山市出身の清水さんも24年前にやって来た。「他県の大規模農家で農薬散布の仕事をしていたが、除草剤を散布するうち、これはまずいと思うようになった」。弥栄地区で有機農業の研修生を募集しているという雑誌記事を見つけ、すぐに応募した。

 弥守の会はIターン者の多さに加え、メンバーの若さも特徴。最年長は清水さんで30代も多い。東京からやって来た女性に理由を尋ねると意外な答えが返ってきた。「『秘境』というフレーズに引かれた。人口が少ない場所の方が新しい挑戦がしやすい」。

 弥栄地区のブランド米「秘境奥島根弥栄」が誕生したのが9年前。秘境が東京一極集中とは逆の動きを生み出すとは思いもしなかった。

 コメを巡っては日米関税交渉に関連し、米国産米の輸入が増える見通し。「かつて輸入農産物でポストハーベスト(収穫後の農薬使用)が問題になったのに、皆忘れてしまったのか。安ければいいというものではないのに」。清水さんの表情が曇った。(健)