韓国の趙顕外相(右)と会談する小泉進次郎農相=11日、ソウル(共同)
韓国の趙顕外相(右)と会談する小泉進次郎農相=11日、ソウル(共同)

 小泉進次郎農相が今月、韓国に対し、福島など8県を対象とする水産物の輸入停止を撤廃するよう求めた。日本の水産物が正当な評価を取り戻すために不可欠な交渉。早期決着に期待したい。

 日本の食卓に浸透している「魚食文化」は、健康に良く、海外の美食家も満足させる国の宝だ。日本食の評価を高め日本の外食産業の海外進出を後押ししている。外国人の訪日(インバウンド)でコメ不足が起きた裏にはこの魚食文化があった。

 とはいえ2011年の福島第1原発事故の影響は大きかった。韓国と中国、香港、マカオの四つの国と地域は輸入停止を継続。中国は東日本の10都県を除き条件付きの輸入再開を発表したが、政治的駆け引きの末ようやく事態が動き出した感がある。

 ここから重要となるのは賢い情報発信だ。この夏読んだ英国の小説には「福島地震」という言葉があった。前後のつながりから東日本大震災のことらしい。小説中の造語だとしてもこれでは事実が正しく伝わらない。予期せぬレッテルが貼られ、あらぬ風評につながる怖さがある。

 小泉農相は「科学的に進めれば理解は得られる」と述べたが、科学に裏切られた原発事故を海外の人も忘れてはくれない。科学の裏付けだけでなく、安全な魚食文化を追い風に「胃袋をつかむ」発信力が必要だ。対象地域の輸出に明かりが戻り、全国の水産業に大きな弾みとなるのが待ち遠しい。(裕)