映像ジャーナリストの熊谷博子さんは10年前、知り合いの医師から「何が何でも会わせたい人がいる」と声をかけられた。その人は岡山県の国立ハンセン病療養所で暮らす宮﨑かづゑさん(97)。10歳で入所し病気の影響で右足と手指を切断、視力もほとんどない。
会う前にかづゑさんの著書『長い道』を読み冒頭4行で深く心を打たれたという。差別に苦しむ内容との予想に反し、家族にいかに愛され愛したか、家族に心配をかけた申し訳なさが、みずみずしい筆致でつづられていたからだ。「その人生を撮って残さねばと思った」と昨年広島であったトークイベントで話していた。
8年かけて撮影された記録は映画『かづゑ的』として昨年公開。著書でも映画でも熊谷さん同様に深く心を打たれるのは、かづゑさんの生きる力だ。
「やろうと思えばできるんよ」と習得したミシンで下着や布団まで手作りし、畑の野菜や釣った魚で料理。療養所内で出会った夫に誘われて見る夕日や小さな花、心を通わす療友、年に数回は面会に来た母親をはじめ確かな愛情を礎に、計り知れない苦難を「みんな受け止めて逃げなかった。ちゃんと生きた」と口にするかづゑさんに何度も“会いたくなる”。
来月5日に松江市市民活動センターで『かづゑ的』の上映と、熊谷さんのトークイベントがある。昨年、水彩画を始めたというかづゑさんの近況もきっと聞けるはずだ。(衣)













