本来は地方の将来像について議論する場が、慰労会の様相になってしまったかのようだ。地方創生をテーマに、首相官邸でおととい始まった石破茂首相と全国の知事による意見交換会。首相の退陣表明翌日とあって、終了後は「地方の声をよく聞いていただき、感謝している」(阿部守一長野県知事)「これまでの業績に感謝をささげる」(平井伸治鳥取県知事)など、ねぎらいの言葉が相次いだ。
初代の担当相で、地方創生を看板政策に掲げていた首相にとっては、本意ではなかっただろう。政府が意見交換会の開催を正式に発表したのが5日。「石破降ろし」の動きが広がる中、続投への強い意思表示と受け止めた。
翌6日夜に「自民党が分裂するのは避けてほしい」と菅義偉副総裁らに促され、翻意した首相。退陣発表の記者会見では「地方創生は最も成し遂げたかった」と未練を口にした。
「地方創生への思いが強く、地方にとってこれほど力強い政権はなかった」。おとといの意見交換会に参加した愛媛県の中村時広知事はこう残念がった。首相交代後、地方創生がないがしろにされるのではないか、という不安の表れにも思える。
自民党総裁である首相の退陣表明を受け、総裁選の日程が決定。関心は「ポスト石破」へと移った。少数与党で新総裁が首相になるとは限らないが、山陰両県をはじめ、人口減少にあえぐ地方の苦悩は忘れないでほしい。(健)













