「戦略」と「戦術」という言葉は似ているが、意味は異なる。戦略は「目的を達成するために進むべき方向性」を、戦術は「戦略を実現させるための具体的な手段」を指す。戦略と戦術は、いわば運命共同体である▼新型コロナウイルス対策に当てはめると、ワクチン接種拡大が戦略なら、戦術は接種機会の確保と調整か。ところが、東京都が「事前予約なし」を売りに設けた若者向け接種会場に希望者が殺到。早朝から長蛇の列ができ「密状態」を作り出してしまった。見通しの甘さが要因。戦術が揺らげば戦略は成り立たない▼きょうは政府がコロナ対策として21都道府県に発令する緊急事態宣言の期限だが、19都道府県での延長が決まった。感染者数は減少傾向にあるものの、医療提供体制の逼迫(ひっぱく)が続き、とても解除できる状況ではない▼緊急事態宣言という戦略も既に4度目になる。飲食店での酒提供の原則禁止、混雑した場所への外出自粛といった相も変わらぬ戦術では、効果が期待薄なのは当然だろう。「明かりははっきり見え始めている」などと楽観論ばかりを並べ、コロナ対応のまずさから支持率を落とした菅義偉首相は「退場」に追い込まれた▼事実上の後継首相を決める自民党総裁選への動きが活発化している。次期衆院選の「顔選び」という側面ばかりに注目が集まるが、候補者には実効性のあるコロナ対策の戦術を示してほしい。(健)