事実上の首相選びとなる自民党総裁選挙が昨日、告示された。立候補したのは予想された4氏。五輪もパラリンピックも終わったことで、テレビは既に実況モード。菅義偉首相が総裁選不出馬を表明した直後から後任総裁レースの予想や動きを伝える。中には競馬さながらに「本命、対抗」の言葉で解説する政治評論家もいる▼今回の総裁選は総選挙が近いため、支持する候補を派閥でまとめるのは難しいという。猿は木から落ちても猿だが、国会議員はそうはいかない。特に当選回数が浅く、支持基盤の弱い議員は、自分が勝ち抜くには「選挙の顔」に誰がふさわしいのか、必死にならざるを得ないからのようだ▼日本の民主主義は不思議な仕組みだ。前回2017年の総選挙は菅首相を前提に投票していない。今回も後で「信任投票」と言える総選挙はあるものの、新首相誕生時は同様だ▼しかもその選出は自民党国会議員の場合、菅首相を選んだ時と同じ人々が1カ月ほどで行う。大統領の選出にほぼ1年をかける米国とは大違いだ▼いわば仲間内で候補を決め短期間で選ぶことは政治空白をつくらない利点はあるが、人物や政策の吟味にはどうか。作家で昭和史に詳しい故半藤一利さんによると「国民のレベルにふさわしいリーダーしか持てないのが歴史の原則」なのだそうだ。総裁、首相選びで試されるのは、自民党や国民の方かもしれない。(己)