市販の解熱鎮痛剤、ワクチンの副作用に使えるのだろうか?
市販の解熱鎮痛剤、ワクチンの副作用に使えるのだろうか?

 新型コロナウイルスのワクチン接種が進む中で気になるのが、接種後の副反応。発熱や倦怠感、筋肉痛といった症状を訴える人がいる。発熱や痛みを和らげるため、市販の解熱鎮痛剤の服用を考える人も多いだろう。一方で「せっかく接種したワクチンの効能が薄まるのでは」「ワクチンと解熱剤との組み合わせによっては症状がひどくなったりしないだろうか」といった不安も頭に浮かぶ。副反応への市販薬の使用について、島根県立中央病院感染症科部長の中村嗣(つかさ)医師(58)に話を聞いた。(Sデジ編集部・宍道香穂)

島根県立中央病院の中村嗣医師

基本は市販の解熱鎮痛剤でOK

 「副反応に市販の解熱鎮痛剤を服用することは、基本的に問題ありません。持病などで別の薬を服用している人や薬にアレルギーがある人は、かかりつけ医や薬剤師に相談して確認してください」と中村先生。解熱剤を飲んだからといってワクチンの効能が薄まったり、ワクチンと解熱鎮痛剤の相互反応で症状がひどくなったりする心配はないとのこと。ワクチンの効果は変わらないと聞き、ひと安心だ。

 解熱鎮痛剤の種類についてはどうだろうか。成分として代表的なのは、アセトアミノフェンやイブプロフェン、ロキソニン。例えばインフルエンザにかかった際にイブプロフェンを服用すると、インフルエンザ脳症など合併症を引き起こす恐れがあり、使用を避けるべきだとされている。

 新型コロナワクチンについても、避けるべき成分はあるのか。中村先生は「ワクチンの副反応に関しては“これはだめ”という薬はありません」とし、鎮痛剤の種類はどれでも問題ないとのこと。普段から飲み慣れている鎮痛剤がある人には同じものを服用するよう勧めており、そうでない人には、胃への負担が少ないアセトアミノフェンを勧めている。

 ドラッグストアで見かける市販薬では、アセトアミノフェン系は「ノーシン」や「セデス」、イブプロフェン系は「イブクイック」「ナロンエース」、ロキソニン系は「ロキソニン」などが挙げられる。パッケージに記載されている成分表示を参考にして選ぼう。

市販薬を購入する際はパッケージ裏の成分表示を参考にしよう

 服用のタイミングはどうだろうか。中村先生は「どのタイミングでも問題ありませんが、実際に発熱など症状が出てから飲むことをお薦めします。解熱鎮痛剤はあくまでも症状を和らげる薬です。予防薬ではないため、症状が出る前に飲んでもあまり意味はありません。むしろ、早く飲んだ分、効果が切れる時間も早くなってしまいます」と説明する。症状が出てから薬を飲む。このことは忘れないようにしなくては。

 市販薬のパッケージには多くの場合「食中に服用」と記載されているが、空腹時に服用しても問題ないとのこと。「高熱時は食欲がないことが多いので、必ずしも食中でなくても大丈夫です。脱水症状防止のため、水分はしっかりと補給してください」と中村先生。

副反応の程度は1回目の接種後を目安に

 副反応の程度は個人差が大きく、どれくらい熱や痛みがでるのか予測するのが難しい。中村先生によると、1回目接種後の副反応が目安になるそうだ。ワクチンの副反応は1回目よりも2回目接種後に強く出やすく、「1回目で出た副反応を基準にして、それを少し強めたものが2回目の副反応だと思ってよいでしょう」と説明する。

 例えば1回目接種時の副反応として微熱が出た場合、2回目はさらに高い熱が出ると考え、必要に応じて薬や食料を備えておくと良いそうだ。

 そう言えば、副反応というと、テレビなどで「アナフィラキシーショック」が取り上げられ、怖さを感じている人もいるのではないか。「アナフィラキシー」はアレルギー反応の一種で、息苦しさやじんましんといった症状がでる。さらに血圧低下など症状の強いものを「アナフィラキシーショック」と呼ぶそうだ。アナフィラキシーは接種後数分で起こることが大半で、接種した人は会場や病院で15~30分程度の経過観察をする。

 アナフィラキシーが起こった場合、程度によって処置が異なる。軽い症状の場合は安静にしていれば回復することが多く、スタッフがその場で処置する。ショック症状が出た場合は応急処置ののち、対応するアドレナリンの筋肉注射をして、医療機関へ搬送などの対処となる。

 接種会場や病院では医師や看護師が対応できるよう準備しているとのこと。中村先生によると、県立中央病院では救急カート(救命用で気道に入れるチューブなどの挿管器具や薬品が入っている)を準備しているが、まだ使用したことはないとのことだ。

 ワクチン接種や副反応については、いろいろな情報があり、正直、自分が接種することに不安を感じていたが、説明を聞いて安心してきた。

副反応について説明する中村先生=出雲市姫原4丁目、島根県立中央病院

ワクチン接種後の発熱、副反応以外のケースも

 ワクチン接種後の発熱について、注意点がある。ワクチン接種の後に発熱しても、それが副反応であるとは限らないということ。「コロナに感染しているかもしれないし、風邪による発熱かもしれない。肺炎などほかの病気の可能性もあります」と中村先生。発熱が副反応によるものかどうかを調べる手段はなく、特定するのは困難だが、「“発熱のピーク”が目安となります。ワクチンの副反応であれば、接種の翌日が一番高熱となり、そこから時間が経つにつれ下がることが多いです」と傾向を説明する。

 副反応でみられる主な症状は、倦怠感、筋肉痛、発熱、頭痛など。咳やたんといったその他の症状が出る人や高熱が続く人は、副反応ではない可能性もある。

 中村先生は「熱が出たからといって必ず解熱剤を飲まなければいけないわけではないので、安静にしているだけでも十分回復します」と話す。高熱や痛みに耐えるのはつらいものだが、じっと身体を休めるのも1つの手。

 もし市販薬を使いたいのであれば、ワクチン接種前にあらかじめ準備しておこう。高熱や痛みが出た状態で解熱剤を買いに出掛けるのはたいへん。薬だけではなく、食料や経口補水液、体温計などもそろえておくと、いざ高熱が出てもあわてずに済みそうだ。