2018年7月~19年7月、自らの子育て体験コラム「ペンと乳―記者の子育て日記」を連載した増田記者は、19年夏に第2子となる男児を出産。このほど復職しました。夫で同僚の多賀芳文記者と共に続編を再開します。新たな家族が加わり、喜びもそして苦労も2倍以上となった暮らしぶりをつづります。

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 「あかちゃん、ウマレル?」

 昨年夏のある朝、2歳の娘が何の脈絡もなく唐突に言った。「もうすぐね~」と返しながら、「まさか今日産まれたりして…」と感じた。

 予感は的中。子どもの発言を軽視してはいけない。夕方、ぐぐぐと骨盤が開いていくような痛みが始まった。尾てい骨の辺りがズーンと鈍く痛むこの感じ。約2年前の陣痛を知っているからこその恐怖心が強く、「気のせい、気のせい」と夕食を準備して平常心を保っていた。

 だんだん痛みは確信に変わった。間隔はまだ不規則だったが、夫に促されて病院に連絡すると「来てもらった方が安心」とのこと。一気に出産が現実味を帯び、緊張してきた。娘も、ただならぬ空気を感じてか「○○ちゃんもいく!」と、自分の荷物を準備し始めた。

 前回、約13時間かかった出産。その経験から「痛いときは長く息を吐いて呼吸に集中する」「痛いのは、お産が進んでいる証拠だからいいこと!」「痛みよ、どんどん来い!」という気持ちで臨んだ。

 が、いざ分娩台を目にすると、ひるんでしまった。ここに上がったらあとは産むしかない、怖い。でも逃げるわけにはいかない。前回はおなかを下したような痛みだったのが、今回は腰にくる痛みだった。腰の内側からメキメキ割れてくるような、灼熱感も伴う痛みだった。当時の日記にはこう記してある。

 「陣痛は、100%ダメージを受けるめちゃくちゃ強い攻撃に自ら食らいに行くのを1分おきにやる感じ。絶対に弱ると分かってるのに行くしかない、避けられない、逃れられない恐怖」

 前向きにと前述したが、最後の方はもうだめだった。「逃げたい、辞めたい」という弱音が勝った。息も止めたくなる。呼吸が乱れ、酸素マスクをつけられた。「こんなに強い痛みを、気絶もせずに感じることができるなんて、人間ってすごい…」なんてことも思っていた。

 そうして、本格的な痛みからおよそ2時間後、無事に男児の産声を聞けた。前回、出産直後に流れた涙は、今回は出なかった。「これからまた、始まるんだな」。そんな静かな幕開けだった。