衆院選島根1区で名字と名前の読み仮名が同じ2人が立候補したことで、関係市町村の選挙管理委員会が対応に追われている。31日の開票作業は、どちらに投票したか即座に判断できない疑問票の判断などで、通常より時間がかかる可能性があり、各選管は想定する小選挙区の終了時間を延ばしたり、現場で見極める立場の人員を充実させたりして本番を迎える。 (取材班)
1区は立憲民主党前職の亀井亜紀子候補と、無所属新人の亀井彰子候補の2人の「かめい・あきこ」候補が出馬。自民党前職の細田博之候補を加え、3人で戦いを繰り広げている。
9市町村で行われる開票時、投票用紙に「亀井」「かめいあきこ」とだけ記された票は「案分票」となることが想定され、この場合、該当する候補者の得票率に応じて割り振られる。
重要なのは、投票所に記された候補の名字や名前以外に、読みづらい字や、住所、年齢などが書かれた場合に生じる「疑問票」の見極めだ。これをさばかないと得票率が確定しないため、選管は神経をとがらせる。
大票田を受け持つ松江市の開票所では、一目見て分かる確定票と、案分票か疑問票のどちらかになりそうな票とを区分。開票所の審査係が、候補者の陣営が選ぶ立会人の意見を聞きながら確定票を積み上げる。
前回の2017年衆院選小選挙区の開票に1時間37分かかった。市選管の藤川祐介事務局長は「通常通りには開票作業が進まないと考えている」とし、30分程度の延長を見込む。
安来市選管は当初、計算用の新しい機械を入れたため全体的に人員を縮小する計画だったが、審査係の人数を維持した上で経験豊富なベテランを投入する。雲南市選管も、審査係には部長、課長級職員を充てる。
氏名が同じ候補者が出馬する選挙を巡っては、20年4月の衆院選静岡4区補欠選挙で漢字と読み方が同じの「田中健」(たなか・けん)氏が2人出馬。静岡県選管は、投票所の氏名掲示表に年齢を記入し、差異化を図った事例がある。
これに対し、島根県選管の担当者は、今回は名前の漢字が違うとして「静岡4区の事例とは異なる」と同様の対応はしない考え。特定の候補に言及すると不公平が生じるとして、疑問票の判断基準なども公言していない。29日は、投開票リハーサルを通常通り行い、データ集計や手順を確認した。
■「民主党」票は案分 立民と国民略称
立憲民主党と国民民主党はともに「民主党」を略称として届け出ており、衆院選比例代表で民主党と書かれた票は、双方の有効票の割合に応じて案分される。
このため総務省は、投票用紙に記入された政党や政治団体の名称が有効か無効かを判断するための参考例を、都道府県選挙管理委員会に通知。正式名称や略称でなくても有効と判断される例として、立憲民主は「立」「立憲」「立民」、国民民主は「国」「国民」を示した。他には、自民党は「自」「自民」、公明党は「公」を例示した。
有効か無効かの最終的な判断は、各開票所の責任者に当たる「開票管理者」が、立会人の意見を聞いて決定する。判断のために参考例を整理した。総務省は「投票はあくまでも名称、略称を正確に記載して行うべきものだ」としている。