<前回のあらすじ>プロジェクトの参考にしようと、石見神楽をテーマに松江市で開かれたトークイベントを取材した。
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「変えない方が難しい。飽きられたら見られなくなっていき、伝統芸能は衰退する」。トークイベントでの西村神楽社中(浜田市)の日高均代表(67)の発言だった。
石見神楽だけでなく、麒麟(きりん)獅子舞や他の伝統芸能にも通じることだろうと共感を覚え、石見神楽の担い手の考え方に興味が湧いた。日高代表の考え方や伝統の捉え方をより深く聞いてみたいと思い、11日、浜田市に車を走らせた。
●次代に伝えるが第一
迎えてくれた日高代表に早速、質問をぶつけた。
ー伝統を守るとはどういうことか。
「古い形を残しているという人がいるが、厳密には昔とは違っている。舞手の体格や性格は違い、同じとはならない。神楽を次代に伝えることが第一で、その次に形を残すことだ」
ー昔ながらのやり方を守るという声はよく聞く。
「昔の形に戻ろうとしても戻れない。守るといってもいつの時代のものを守るのか。伝統芸能として完成していれば守り続ければいいと思う。ただ、時代とともに評価は変わり、完成はしないだろう」
ー石見神楽はどのように発展してきたか。
「新しいことをしても見ている人から不評だと伝統的な方へ立ち返る。それを繰り返し、先代を越えようとして進化してきた。もともと素朴な衣装だったが、派手な衣装に変わっていった。花火を使った演出や大蛇(おろち)に使う蛇腹の蛇胴も取り入れた。新しいことでも5年、10年たてば伝統になる」
ー継承のための取り組みは。
「高校生までが所属する『子ども神楽』をやっている。継承には欠かせない存在だ。石見神楽のごっこ遊びをしていた子どもたちを教えるところから始まった。神楽がやりたくて地元に残る人もいる」
●交流会の日程決まる
革新的なことでも多くの人に受け入れられ、継続できれば伝統になるのだと思う。伝統の上に革新が積み重なることで魅力が磨かれ、担い手が現れるという流れができそうだ。先代を越えようとする意志が継承には不可欠だということだろう。
交流会の日程もめどが立った。4日に浜田石見神楽社中連絡協議会の担当者に電話すると、3月5日開催でOKとの返事。すぐに麒麟獅子舞側にも連絡し、ようやく日程が確定した。急いで意見交換の議題や経費の算出をしよう。
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麒麟獅子舞編第10回は2月6日に掲載。交流会の議題を考えます。