2021年の出生数は統計開始以来最少の約81万人。ベビーブームのピークだった1949年の約270万人に比べると7割減になる。コロナ禍の影響は不明だが、少子化に拍車がかかっている▼要因はいろいろだろうが、50年代から70年代にかけて浸透した生活様式の影響もあると思う。今に通じる「2DK」で「核家族」「子どもは2人まで」という家庭像だ▼ダイニングキッチンを採用した2DKの標準モデルが公営住宅に初めて登場したのは50年代の初め。広さ約40平方メートルで畳の部屋は6畳と4畳半。これでは子だくさんは無理。ただ、寝る部屋と食べる部屋を分ける間取りを実現。家電製品の普及と合わせて憧れのモダンな暮らしとして民間にも広がった▼当時は今とは逆に人口の急増が懸念され、中南米などへの移住を復活させた時代。2DKの普及も実は「人口抑制」の狙いがあったとされる。女性1人が生涯に産む子どもの推定人数「合計特殊出生率」はその結果、40年代終盤の4人台から10年足らずで半減した▼追い打ちをかけたのが74年に開催された「日本人口会議」。官民で「子どもは2人まで」と提唱した。その後、軌道修正はされたものの、「2人まで」が標準という意識が変わらない限り、晩婚化や非婚化が進めば数値はさらに下がり、少子化は止まらない。かつての人口抑制策の後遺症が、今となっては恨めしい。(己)