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733年に編さんされた出雲国風土記には、宍道湖を取り囲むように位置する四つの「カンナビ山」(神の社がある山)についての記述がある▼『解説出雲国風土記』(島根県古代文化センター編)によると、神が山に宿るという意味の「カンナビ」は一般的な言葉であり、全国各地にもカンナビ山はあるという。ただ、宍道湖周辺の四つのカンナビ山には、特別な意味があるように思う▼四つの山のうち宍道湖の北西方向にある神名樋(かんなび)山(現在の大船山、標高327メートル)を訪ねた。竹林の登山口から丁寧に草木が刈られた山道を登り、山頂に達した後、尾根沿いを少し下ると、出雲国風土記に記されている「石神」とみられる「烏帽子(えぼし)岩」が鎮座する。さらに隣の鍋池山(同358メートル)を経由して東側の尾根に出ると、眼下に宍道湖、大山、三瓶山や簸川平野を一望できる岩場にたどり着く。出雲神話で繰り広げられる「国造り」の世界観を感じられる場所の一つ。地元住民や登山愛好家の間では「平田アルプス」の名前で親しまれている▼烏帽子岩の近くでは古墳時代(3世紀後半~7世紀前半)の土器も採取されているといい、実際にここを神が宿る場所としてあがめた人々が古くから存在していたのだろう▼きょうは「山の日」。地元の身近な山に思いをはせ、古里の大地を作り上げた自然の営みと、地域に暮らした先達に感謝する日としたい。(万)