米大リーグ、アスレチックス戦に先発登板して今季10勝目を挙げ、104年ぶりとなる「2桁勝利、2桁本塁打」を達成したエンゼルス・大谷翔平選手。打者では25号ソロを放った=9日、オークランド(共同)
米大リーグ、アスレチックス戦に先発登板して今季10勝目を挙げ、104年ぶりとなる「2桁勝利、2桁本塁打」を達成したエンゼルス・大谷翔平選手。打者では25号ソロを放った=9日、オークランド(共同)

 「二兎(にと)を追う者は一兎をも得ず」は、幕末に欧州から伝わったことわざの翻訳で、明治以降、小学校の教科書に載ったことで広まったとされる。そんな教訓を覆す活躍を続ける米大リーグ・エンゼルスの「二刀流」大谷翔平選手(28)▼一昨日のアスレチックス戦に「2番・投手兼指名打者」で先発。6回を無失点に抑えて10勝目を挙げ1918年のベーブ・ルース以来104年ぶりの「2桁勝利・2桁本塁打」を、今季4度目の挑戦でついに達成。自ら祝砲となる25号本塁打も放った▼米大リーグで10勝以上を挙げる投手は珍しくない。本塁打を10本以上打つ選手も数多い。しかし両方を同時に達成する選手が1世紀も出なかったことは、二兎を追う「二刀流」がいかに難しいかを物語っている▼注目しているのが大谷選手の打順。打席が多く回って来る1番か2番がほぼ指定席。日本の野球の常識では「4番打者」と言うように、強打者は「クリーンアップ」と呼ばれる3番、4番、5番の打順が定番だった。ただ打席に立つ回数が多いほど本塁打のチャンスも観客の楽しみも増える▼この辺りが米国流かもしれない。「二刀流」が花開いた背景にも、伝統的な「フロンティア精神」が味方しているのだろう。従来の野球の常識を次々に塗り替える大谷選手の挑戦。今秋にも再燃が予想される移籍話を含め、「ショータイム」から今後も目が離せない。(己)