<半端ない>という表現は、どうやら市民権を得たらしい。文化庁が公表した2021年度の国語世論調査で、6割が「気にならない」と答え、「使うことがある」は4割超と、11年度調査から倍増した▼もともとはサッカーJ1ヴィッセル神戸でプレーする大迫勇也選手の高校時代、試合に負けた相手チームの選手が世代離れした実力に脱帽し、泣きながら語った言葉が広まるきっかけになったとされる。<中途半端でない>が意味するところで、<度を超えた><手に負えない>といったニュアンスに近い▼となると、今秋こう叫んだ人も多かったかもしれない。「値上げ、半端ないって」。言い方は許容できても、家計の負担増は受け入れがたい。ビール、コーヒー、ハム、調味料、外食の回転すしに牛丼…。民間調査会社によると、10月の食品値上げは今年最多の約6700品目に上る▼これで終わりでなく、物価上昇は日用品や光熱費を含めて止まりそうにない。政府は来年春にかけて急激な値上がりが懸念される電気代の抑制策として、電力会社への補助金投入を検討しているという▼岸田文雄首相は「前例のない思い切った対策」を講じると表明したはずだが、はて。似たようなガソリン補助金の前例はあったと記憶する。しかも一部はスタンドの経営改善に使われていたとか。消費者が恩恵を実感しにくい中途半端な策だけはご免である。(史)