希望や期待と、ちょっぴり不安が交錯する新年度が始まった。進学や就職など新たな一歩を踏み出す人もいるだろう。季節はちょうど花見の頃。人生の節目には桜の花がよく似合う▼幸い今季はコロナ禍が落ち着き、マスクの着用は個人の判断になった。賃上げの機運も久々に盛り上がる。大手金融機関は軒並み初任給の大幅アップを発表。春闘でも大手は満額回答が相次いだ。全国に拠点を持つイオンもパート従業員約40万人の時給を平均7%引き上げる▼歌舞伎の名台詞(せりふ)ではないが、今のところは「こいつぁ春から縁起がいいわぇ」といった感じか。この機運が中小企業にも波及し、来年以降も続くといい。やはり「継続は力なり」だ▼ところで新年度の4月開始が広がったのは、国の会計年度が1886年度から変更されたことがきっかけ。大蔵卿や蔵相を務めた松方正義(後に首相)が赤字対策の帳尻合わせに、それまでの7月スタートを改め、翌年6月までのはずだった85年度を3カ月短縮した。桜の下での入学式は、そのおかげで実現したとも言える▼そんな松方が82年に設立したのが日本銀行。間もなく、その舵(かじ)取り役を務める総裁のバトンタッチがある。10年間続いた「花見酒」のような「異次元の金融緩和」の出口をどうするか-。処方箋を誤ると金融市場に大きな影響が出かねない。こちらも新総裁の手腕に期待と不安が交錯する。(己)