週末に時折、皇居周辺をランニングしている。先日は擦れ違う外国人観光客の多さに驚いた。20人程度の団体が数組いたほか、家族連れも目立った。東京へ転勤したばかりの1年前には見られなかった光景だ▼政府が新型コロナウイルスの水際対策を緩和して以降、インバウンド(訪日客)は拡大の一途をたどる。マスクはなかなか外れないものの、東京はいよいよコロナ後の世界が到来したような雰囲気である▼この外国人たちを地方へ呼び込むため、国は富裕層向けの支援に力を入れるという。集中的に後押しするモデル地区に全国11エリアが初めて選ばれ、「鳥取・島根」エリアも入った▼両県の担当記者と一緒にどういう戦略を描くのか取材したが、気になったのが体制。鳥取県が積極的に資料提供してPRする一方、一般社団法人が主体の島根側は県による詳細な説明がおぼつかなかった。両県の具体的な連携策もこれから。官民が一丸となって取り組む姿が見たい▼コロナ前の2019年、富裕層は訪日客全体の1%足らずだったが、買い物や飲食などの消費額は11・5%を占めた。人口減が進む両県で皇居を観光する多くの外国人を一度に受け入れるのは難しいかもしれないが、少ない富裕層でも何日間も滞在してもらうことができれば経済波及効果は大きい。量より質を求める時代のモデルケースになり得る。戦略をしっかり描いてほしい。(吏)