初夏を思わせる陽気に誘われ、祖母が20年前に縫ってくれたワンピースを出した。体形が変わり多少きついが、まとえば守られているような気がする。手製の服は、作り手の思いも受け取り、簡単には手放せない▼2年前の環境省の調査によると、国民1人当たりで年間に衣服18枚を購入し、12枚を処分、一回も着ない服は25枚に上るという。処分先は「ごみとして廃棄」が68%。大半が焼却・埋め立て処分される。その量は年間約48万トン。大型トラック130台分を毎日処分する換算だ▼処分するよりも買う服が多い背景には、手軽に買える市場に一因がありそうだ。価格推移をみると、1990年は衣服1枚当たり6848円だったが、2019年は3202円に。値札に喜んでばかりはいられない▼10年前の4月24日、バングラデシュの首都ダッカ近郊のビルが崩落し、1134人が亡くなった。多くはビル内の縫製工場の女性従業員。先進国の企業が人件費が安い途上国の工場を使い、彼女たちは低賃金かつ危険な場所での労働を余儀なくされた▼原料の綿は害虫の被害を受けやすいため農薬の使用量が多く、途上国の農家の健康を損ねている実態もある。事故を機に4月24日はファッション産業の在り方を問う「ファッションレボリューションデー」と定められた。おしゃれ心と身だしなみは大切にしつつ、賢い買い物をするきっかけにしたい。(衣)