百年の大計といわれる斐伊川・神戸川治水計画3点セットの一つ、斐伊川放水路(出雲市大津町-同市上塩冶町)の運用開始から16日で10年となった。洪水時に斐伊川の水を分流して県都・松江市などの浸水を防ぐ役割は豪雨災害が激甚化する中、重みを増す。3点セットのうち大橋川改修と中海・宍道湖の湖岸堤整備は未完で、早期整備を求める声は強い。
(出雲総局報道部・松本直也)

2021年7月12日の大雨で放水路に流れ込む斐伊川からの分流水=出雲市大津町

 ゴーーー。斐伊川放水路分流堰(ぜき)(出雲市大津町)に斐伊川からの濁った水が流れ込み、ごう音が響いた。

 2021年7月12日。活発化した梅雨前線の影響で未明から猛烈な大雨に襲われ、国土交通省出雲河川事務所は斐伊川から放水路へ分流を開始した。

 堰から4・2キロ上流にある斐伊川上島観測所の最大流量は毎秒約2190トン。大橋川があふれ松江市街地が浸水した06年7月水害時の毎秒2400トンに迫る量だ。放水路へは最大毎秒810トンを分流し、運用開始以来最大を記録した。

 06年水害の大橋川の最高水位は特別警戒水位(1・40メートル)を上回る1・96メートルだったが、21年は1・05メートルに抑えた。...