楽しい夏休みも残り半分。そろそろ宿題が気になっている人もいるかもしれませんね。夏休みの宿題の定番と言えば自由研究ですが、こんな自由研究をした人がいます。
『富士山(ふじさん)のまりも 夏休み自由研究50年後の大発見』(亀田良成(かめだよししげ)・著(ちょ)、福音館(ふくいんかん)書店)の亀田さんは、小学3年生の時、富(ふ)士(じ)五(ご)湖(こ)の一つである山中湖(やまなかこ)で、小さなまりもを見つけました。そのまりもの観察を、夏休みの自由研究としてまとめたのは、5年生の時のことでした。
それから50年後。亀田さんは偶然(ぐうぜん)、山中湖のまりもが絶滅(ぜつめつ)しかかっていることを知り、大変驚(おどろ)きます。なぜならあの時のまりもは、その後も亀田家の庭の水そうで元気に増(ふ)え続けていたのですから!
さっそく専門家(せんもんか)に確認(かくにん)してもらい、亀田家のマリモは「幻(まぼろし)のマリモ」フジマリモであることが分かりました。驚きの大発見につながったのです。
研究の方法には「観察する」の他に本で調べるやり方もあります。
『桃太郎(ももたろう)は盗人(ぬすっと)なのか?―「桃太郎」から考える鬼(おに)の正体-』(倉持(くらもち)よつば著、新日本出版社(しゅっぱんしゃ))は、「桃太郎は盗人だ」と書かれた本に疑問(ぎもん)を持った5年生の倉持さんが、200冊(さつ)以上の本を読み、調べたことをまとめたものです。
この本の中できらりと光るのは、倉持さんの旺盛(おうせい)な好奇心(こうきしん)、探求心(たんきゅうしん)のすばらしさです。調べれば調べるほど次々とわいてくる疑問と向き合い、「次はこうしよう」「これはどういうことだろう?」と突(つ)き進んでいく姿(すがた)は、研究することの楽しさにあふれています。
倉持さんの研究には司書や学芸員が協力していますが、孫(まご)の自由研究に協力した祖父(そふ)の心の変化が胸(むね)を打つのは『聞かせて、おじいちゃんー原爆(げんばく)の語り部 森(もり)政(まさ)忠(ただ)雄(お)さんの決意』(横田明子(よこたあきこ)・著、国土社)です。
森政さんは広島市の生まれ。1945年8月6日、6年生だった森政さんは、原爆投下の被害(ひがい)にあい、つらくむごい体験をすることになります。
森政さんは長い間だれにもその体験を語ることができませんでした。しかし、孫の友紀子(ゆきこ)さんが夏休みの自由研究として原爆のことを聞きに来たことがきっかけとなり、体験を言葉にすることができるようになりました。
「明日の神話」という絵を見ながら森政さんが考える場面があります。59年の年月は必要だったけれど、あの苦しい思い出を乗り越(こ)える力、勇気が自分にもあった。「ぼくも、だまったままでいるわけにはいかない」と。
今日は原爆の日。どうぞこの本を開いて、森政さんの思いを受け取ってください。
自由研究は宿題の一つ。でも、そこからさまざまなドラマや思いが生まれていましたね。みなさんの宿題も思いもよらない何かにつながるかもしれませんよ。
(周藤(すとう)美穂(みほ)・松江(まつえ)市立母衣(ほろ)小学校 学校司書)