鳥取県が約3億円で購入したアンディ・ウォーホルの立体作品「ブリロの箱」

 鳥取県が2025年春に開館する県立美術館(倉吉市駄経寺町)の目玉として約3億円で購入した「ブリロの箱」。ポップアートの巨匠アンディ・ウォーホルの立体作品だ。価格もさることながら「これがアートなのか」との疑問が噴出した。ただ、制作された時代を追うと作品の革新性が浮かび上がる。館長予定者で県教育委員会美術館整備局の尾﨑信一郎美術振興監に、作品の価値について聞いた。

(聞き手は政経部長・手銭淳)

▽時代追うと浮かぶ価値


 「ブリロの箱」は1960年代に登場したポップアートの代表的な作品。なぜ評価されたのか理解するには「近代・現代美術史をたどり、美術が何を問題としてきたかを探る必要がある」と、尾﨑氏は指摘する。
 

尾﨑喜信一郎氏

 -ポップアートなど20世紀の西洋美術は難しいといわれるのはなぜか。

 「美術の求めるものが変わったからだ。それまでは古代ギリシャ・ローマ時代に確立された美の規範があった。理想を追求する大きな流れがあり、作品の素晴らしさを判定しやすかった。19世紀後半に印象派が登場して以降は『新しさ』がキーワードとなった。美術史を学ばなければ、...