「このコラムの値段は?」。そう聞かれたら困ってしまう。新聞購読料に含まれているが、どれほどの割合を占めるのか。記事ごとの単価を合計すると、1部にこれだけ豊富な情報量を詰めた新聞はお買い得だろう。手前みそだが▼コラムをはじめ一部の記事は、巨大IT企業などが運営するニュースポータルサイトを通じても配信される。昨年7月の参院選を受けて書いたコラムは、会心作でもないのに1年以上にわたり、高い閲覧数を誇った。こちらの意図しない刺激的な見出しが付いたのが一因だ。うれしい半面、悩ましくもある▼一方、取材執筆の労力に比べ、対価としての記事使用料(許諾料)は必ずしも高くない。ニュースのインターネット配信を巡って公正取引委員会が先日、IT企業と、記事を提供するメディア各社の取引実態の調査報告書を公表した。最も利用者が多いヤフーについては「優越的地位にある可能性」を指摘。記事使用料が著しく安い場合、独占禁止法上問題になり得ると警告した▼加工食品などとは違い、記事の適正価格は決めづらい。ただ、安く買いたたかれているのなら是正が必要だ。記事に限ったことではない▼今回の調査により報道機関は記事の対価を巡る交渉の後ろ盾を得た格好だが、巨大IT側の対応が注目される。もし、このコラムがポータルサイトで採用された際、どんな見出しが付くのだろう。興味深い。(健)