倉吉市の大御堂廃寺跡が整備される。全国でも珍しい大規模で本格的な古代寺院跡。隣接地に鳥取県立美術館の建設が決まり、一体的に情報発信しようと市教育委員会が乗り出した。ユニークなのは「つくり育てていく史跡」というコンセプト▼寺を囲む築地塀の一部復元は、土を突き固めて土塀を築く「版築」を随時、希望者に体験してもらい、市民の手で進める。「塔心礎」(塔の柱の礎石)露出展示など史跡整備は美術館開館に合わせて2024年度完了を目指すが、築地塀の版築だけは無期限▼本欄で以前、60年以上続いてなお道半ばの鳥取城跡石垣修理を、なかなか完成しない建築として有名なスペインのサグラダ・ファミリア教会に例えた。大御堂の築地塀も同様。一部復元しか想定されていないが「市民の力で、いつか全部復元」をうたい文句にすれば、面白い▼現在進行形の版築作業は美術館来館者の目を引くはず。大御堂廃寺跡への呼び水になり、相乗効果が発揮されそうだ。来館者から版築の希望者を募ってもいい▼一方で、美術館へのいざないに、どう趣向を凝らすか。美術館そばに野外彫刻を置くのが一案だろう。仏教か、寺院をイメージした神秘的な彫刻がいい。東洋美術の要素を取り入れて幻想的な風景画を描く英国の画家、ロジャー・ディーンさんのような作風で。いまだ定まらない美術館のシンボル的な作品にならないか。(志)