「ネット社会の高度化という社会の動向は止まらないでしょう。しかしネットを使えない人が、使いこなせる人に比べて公共サービスの面で明らかな不利益を被ることはあってはならないと思います」―。先月8日付の本紙投稿欄「こだま」に掲載された、出雲市の鈴木幸一さん(66)の意見に共感した▼鈴木さんが例に挙げたのは、スマートフォンの割安料金プランの申し込みを巡る対応の違い。スマホで申し込めば無料だが、店頭で行えば有料。事業者にとってスマホ申し込みなら人件費がかからず無料にできるが、スマホやネットに不慣れな人は手数料を求められ、割を食う▼この手のネット割引は多くの商品やサービスに広がり、ネット利用者を「お得感」に誘う。そのお得感が広がるほどネットを使えない人との得失格差は拡大し、買い物などを通じた家計への影響も無視できなくなる▼総務省によると、ネット利用率は高齢になるほど低くなるが、貧富にも関係する。年収800万円以上の世帯の利用率(2019年)が93%を超えるのに対し、200万円未満は80%で10ポイント以上低い▼ネット利用促進を含めたデジタル改革関連法が成立して、司令塔となるデジタル庁が今年9月発足する。「デジタル後進国」の汚名を返上しようという菅義偉首相が提唱した政策ながら「何でもデジタル」に目を奪われて、付いていけない人を見失わないように。(前)