ラグビーW杯フランス大会第2戦、スクラムでイングランド(左)と堂々とわたり合う日本代表=17日、ニース(共同)
ラグビーW杯フランス大会第2戦、スクラムでイングランド(左)と堂々とわたり合う日本代表=17日、ニース(共同)

 ぎりぎりで間に合ったときに使う「滑り込み」は野球から、あるがままの態度を言う「自然体」は剣道や柔道の立ち姿勢から来た言葉で、一般的にも広く使われる▼スポーツや武道に由来する言葉は、調べてみるとそれなりに多いことに気付く。ラグビーの「スクラムを組む」もその一つだろう。屈強な大男たちが塊となってぶつかり、押し合う迫力満点のセットプレーは転じて一致団結の意味で使われるようになった▼ワールドカップ(W杯)フランス大会のイングランド戦で互角に組み合った日本代表の一糸乱れぬスクラムとは違い、こちらの結束はほころびが見え始めたようだ。米欧を中心とした各国のウクライナ支援のことである▼「全ての力を結集し、侵略者を打ち負かすため団結しなければならない」。ウクライナのゼレンスキー大統領は国連総会の一般討論演説でこう訴えたが、会場は熱気を欠いたと伝わる。演説での発言を巡り隣国ポーランドと亀裂も生じた。後ろ盾となってきた米国も国内で支援の継続に懐疑的な見方がくすぶり、一枚岩とはいかない。支援疲れからスクラムの中で〝押しているふり〟の国もありはしないか。ウクライナは気が気でないだろう▼ロシアの侵攻開始から1年半が過ぎた。ラグビー用語で試合終了の「ノーサイド」は対立を乗り越えて和解する意味でも使われる。その笛が鳴らされる日は果たして来るだろうか。(史)