向こう側でどんな人が見ているか。カメラを向けられた途端緊張した。勤務する東京で先日、人生で初めてインターネットの生配信番組に出演した。普段取材する際は裏方。遠慮を忘れ写真を撮るが、逆はどうも慣れない▼対談形式の相手は石見神楽東京社中代表で浜田市出身の小加本行広さん(39)。10年前から神楽の認知度向上を目指す挑戦に取り組み、来月3日に記念公演が控える▼言わずもがな、コロナ禍でライブ・エンタメ界は大打撃を受けた。ぴあ総研(東京)の調査では2020年の市場規模は前年比8割減でイベントはことごとく中止。五輪に合わせ「伝統芸能の聖地」東京・国立劇場で予定していた石見神楽の上演もなくなり、東京社中も約30公演が消滅した▼記念公演への意気込みはひとしおだが、1時間に及ぶ対談中、小加本さんは都会で活動を続ける厳しさもこぼした。太鼓など鳴り物を使える練習場所を探すだけでも苦労し、料金も高い。道具保管の倉庫代もかさむ。地元と同じことはできないが、支えてきたのはひとえにメンバーの神楽愛だ▼公演の目玉は10年目で登場する念願のオリジナル衣装。石見神楽の各社中はこだわりを込め作ったきらびやかな衣装を何世代も引き継ぐ。10年、20年先、東京で「どんちっち」の八調子を鳴らす次代のメンバーに思いと誇りをつなぐ象徴。そのお目見えとともに東京社中の第2幕が開く。(築)