その名字を聞き、親しみを覚えた人もいたのではないか。4月1日付で日本航空(JAL)の社長への昇格が決まった鳥取三津子取締役専務執行役員(59)。鳥取県の平井伸治知事は先日の記者会見で「親戚が偉くなったような喜びを感じた」と話し、昇格人事を知り、すぐに祝電を打ったと明かした。
山陰で暮らしながら「鳥取」という名字にお目にかかったことがなかった。調べると、「鳥取姓」は全国で約1700人。大和朝廷で鳥を捕獲し飼育する技術を世襲していた「鳥取部(ととりべ)」やゆかりの場所が由来らしく、大阪府や福岡、香川両県などで多いという。JALの鳥取さんも福岡出身。
ただ、世間の注目は珍名より、70年を超える歴史で初の女性トップという目新しさや、客室乗務員(CA)として第一線で30年以上働いた経歴に集まっているようだ。
そこで昨年9月の内閣改造を思い出した。過去最多に並ぶ5人の女性閣僚を起用した岸田文雄首相は「女性ならではの感性を発揮してほしい」と発言。これに対し、女性を能力で判断せず「対等な存在と見ていないことが透けて見える」などと批判が広がった。
JALが期待するのは「女性ならではの感性」ではなく、CAとして貫いてきた顧客目線だろう。「(顧客の)多様な価値観に応え、また利用したいと思ってもらえるようにやってきた」と鳥取さん。〝偉くなった親戚〟の経営手腕にも注目したい。(健)