今月3日、永野三智さん(40)は不安を覚えた。不妊手術を強いた旧優生保護法を憲法違反とし、国の賠償責任を認めた最高裁判決に。水俣病患者を支援する熊本県水俣市の「水俣病センター相思社」の常務理事。11年前、水俣病認定訴訟の最高裁判決で、国や県に勝って光を見たが、患者が置かれた状況は変わらないどころか悪化している現状と当時が交差したからだ▼「1回判決が出たからといって決して良くならないという前提でいないと、あの人たち(原告や不妊手術をされた約2万5千人)は本当の意味で救われない。油断しないで絶対に世の中が忘れないようにしなければ」とラジオで話した▼永野さんの歩みは自著『みな、やっとの思いで坂をのぼる』に詳しい。自らの無力さに悩んだ時、作家の故石牟礼道子さんから贈られた言葉が「悶(もだ)え加勢すれば良かと」。苦しんでいる人とオロオロ一緒に苦しむだけでその人は少し楽になる。それを続ければいいと▼その言葉に救われたのは、5月1日に環境相との懇談で、患者の発言が遮られた問題だった。その場にいながら何もできなかった罪悪感があったが、患者と共に傷つき、全国の人も同様に傷ついて大きな声になった。その悶え加勢が支えになったと▼きょう、あすも、環境相と患者の再懇談の場が、水俣市で設けられている。何が語られるのか。水俣病問題の現状を知り、悶え加勢したい。(衣)