今年の山陰地方は梅雨入りが遅れたため「雨量もそんなに多くないのではないか」と思っていたが、甘い考えだった。
おとといの豪雨では島根半島で道路が陥没。西端の出雲市大社町日御碕地区が孤立状態になった。最近メディアなどでよく伝えられているので、ご存じの方もいると思うが、改めて紹介したい。人間が日頃持つ性質として「自分は大丈夫だ」「この程度(の雨)なら問題ない」という危険性を認識しようとしない正常性バイアス(偏見)がある。
こうした考えは、穏やかに暮らしていく上で必要ではあるが、備えが遅れる、避難しないなど危機管理上はマイナスに働くことがある。日御碕に実家がある同僚の話によると、稲佐の浜から日御碕へと続く一本道の県道が陥没した写真が、瞬く間に地域へと伝わり、危機意識の共有につながったという。
ただ、油断はできない。思い出されるのは、1983(昭和58)年7月に起きた島根県西部豪雨だ。浜田市穂出町中場地区で15人が犠牲になった地滑りは、雨の日の翌日、晴れた夏空の下で発生した。
これも周知のことかもしれないが、水を含んだ土砂は重力を大きく増し、その後少し力が加わるだけで抵抗力を上回り、表層が崩れるという。スマートフォンで災害情報を収集するのはもちろん大切だが、崖から水が噴き出している、小石がパラパラ落ちるといった自然の兆候にも、目や耳を向けたい。(万)