JR蒲田駅近くの掲示板に張られた、女の子や花の絵と共にQRコードが掲載された東京都知事選のポスター(左右と下)=4日
JR蒲田駅近くの掲示板に張られた、女の子や花の絵と共にQRコードが掲載された東京都知事選のポスター(左右と下)=4日

 転勤先の東京で7日に投開票された都知事選は異例ずくめだった。話題の一つは選挙ポスターの問題。自宅近くの掲示板には犬が大写しになったデザインのポスターが何枚も張ってあった。候補者の名前や顔写真、主張の記載はなく、強い違和感を覚えた▼こうした候補者たちの選挙結果は当然、下位に沈んだ。犬の写真など掲示板の枠に好きなポスターを張れるとして、寄付を募る活動を展開した政治団体「NHKから国民を守る党」の公認候補19人の得票数は計約1万2千票。680万を超える全体の1%にも満たなかった▼話題に上ることが狙いのようなので、マスコミとしては今後の取り上げ方が課題だが、国会では公職選挙法改正に向けた動きが出てきそうだ。ポスターの記載内容を直接制限する規定がなく、与野党幹部から見直しへの発言が相次いでいる▼その際は幅広い議論が必要だろう。都内を歩くと掲示板が多く感じた。公選法に基づき、投票区ごとの面積と人口などに応じて設置した数は約1万4千カ所。2023年の島根県知事選の県内設置数と比べて約4倍と「密集」する▼都知事選の経費は24年度当初予算ベースで過去最高の59億円超になる。「政治とカネ」の問題が叫ばれる中、経費削減のためにも基準を変えて掲示板を減らし、デジタルに移行してはどうか。面積が広く、高齢者が多い地方に配慮しながら議論を深めてほしい。(吏)