男ばかりのきょうだいで、両親は共働き。母から「これからは男も家事ができんといけん」と言われて育った▼料理のレパートリーはさほど増えなかったが、部活動で泥だらけになったユニホームは毎日、風呂場でせっけんを付けてこすり、洗濯機を回した。大学時代の寮生活で何人もの同期が全自動洗濯機さえ使えず、高校までのルーティンが「当たり前」ではなかったと知った▼日本総合研究所の藤波匠上席主任研究員が先日、米子、松江両市で「なぜ少子化は止められないのか」と題して講演。経済・雇用環境とともに改善するべき課題としてジェンダー・ギャップ(男女格差)を挙げた▼「多くの女性が働くようになったことによって結婚、出産に壁を感じるようになってきている」と藤波さん。壁の一つを「家庭内の役割」とし、女性の「仕事」「家事・育児」の総時間が増える現状に「働く女性の負担増は明らか」と指摘した▼雇用慣行の男性優位が残る現代社会。女性活躍、女性役員比率の向上という標語、役割の押し付けには抵抗感を抱くが、世界経済フォーラムが先月発表したジェンダー・ギャップ指数で、146カ国中118位という日本の実態はこのままにしておけない。一人では何も変えられないが、一人一人の積み重ねで「当たり前」は醸成できる。自らもてきぱき家事をこなした母の先見性にうなりながら、皿を洗い、風呂を磨く。(吉)