「3年3割」といっても、プロ野球で首位打者争いを毎年繰り広げる好打者の話ではない。新入社員が3年以内に離職する割合のこと。厚生労働省によると、2020年3月に卒業して就職した人の「3年離職率」は大卒が32・3%、高卒は37・0%。確かに3割を超えている▼先日、職業体験で新聞社にやって来た学生5人に尋ねた。「今の若い人は一つの会社にずっと勤めようなんて気はないんでしょ?」。すると全員が「そんなことはない」と否定。「入った会社で長く頑張りたいし、大学も早期退職しないように進路指導している」と続けた。目は真剣だった▼生まれた家庭環境で人生が大きく左右される例えとして「親ガチャ」という言葉が流行したのが3年前。それを基に、企業版の「上司ガチャ」「配属ガチャ」なる言葉も生まれた。そんな一部の風潮を真に受け「腰かけ気分では」と色眼鏡で見ていた自分を反省した▼実は「3年3割」は今に始まった問題ではない。統計をさかのぼると大卒はリーマン・ショックの影響を受けた09年を除き、1995年以降3割超が続いている。特に宿泊業、飲食サービス業が高いという▼来春就職を希望する高校生の採用試験が16日、全国一斉に始まった。来月1日は大卒採用の内定式も控える。最初から腰かけ気分の若者は少ないだろう。まずは社会勉強。それから仕事でヒットをかっ飛ばしてほしい。(健)