大相撲初場所千秋楽で豊昇龍(右)に攻め込まれる琴桜=1月26日、両国国技館
大相撲初場所千秋楽で豊昇龍(右)に攻め込まれる琴桜=1月26日、両国国技館

 きのうに続き大相撲の話題から。横綱昇進の伝達式に臨んだ豊昇龍が注目の口上で選んだのが「気魄(きはく)一閃(いっせん)」という聞き慣れない言葉だった。

 手元の広辞苑を引くと【気魄(気迫)】は<何ものにも屈せず、立ち向かっていく強い精神力>、【一閃】は<ぴかりと光ること。また、そのひらめき>とある。大関昇進時も使っており「親方と話して決めた。何が起きても何があっても力強く立ち向かえるように頑張りたいと思って使った」と新横綱。精神力を重視していることがうかがえる。

 偶然だろうか。叔父の第68代横綱朝青龍が伝達式を迎えたのも、22年前の同じ1月29日だった。ただ口上は「相撲道発展のために一生懸命頑張ります」と至ってシンプル。こちらの方が真っすぐ胸に響く。

 52年前に同じく「一生懸命」を口上で使っていたのが、倉吉市出身の第53代横綱琴桜。32場所にわたって大関を務めた末、32歳2カ月での昇進で「遅咲きの桜、ようやく満開」とたたえられた。

 その苦労人の孫で、しこ名を受け継いだ大関琴桜は、綱とりが懸かった初場所で重圧に押しつぶされたのか、よもやの負け越し。精神力の差が出たのか、豊昇龍に先を越されてしまった。どんな思いでライバルの口上を聞いたのか。まだ27歳。祖父の足取りを見れば焦る必要はない。「心機一転」「捲土(けんど)重来」「名誉挽回」…。落ち込む大関に送りたい四字熟語はいくつもある。(健)