脳性まひのある「ぼく」は、特別支援学級で一人で学ぶ5年生。ある日、4年2組の28人の児童がやってきて、吉田先生がぼくを紹介しました。
「4年2組のみなさん、ようこそ、にじ組へ。今日から始まる交流の時間を、先生はとても楽しみにしていました」「ここにいるのが高橋真人くんです。マーくんと呼んでくださいね」
交流会「スマイルアトラクション」に向けて週に1回、にじ組で交流が始まりました。でも、マーくんは少し不安そう。「交流って、何をするんだろう?」「本当に楽しいのかな?」
マーくんと4年2組の児童のように、小中学校の特別支援学級の子どもと、通常学級の子がともに活動することを「交流及び共同学習」といいます。障害のない子たちが近隣の特別支援学校の子たちと交流する場合や、地域の障害のある人との交流なども含みます。
最初に4年2組の児童が提案したのは、手を使って物を操作するゲーム。しかし、マーくんは話すことや自分の足で歩くこと、手を使って食事をすることができません。それでも先生は初めから「無理なのでは」と決めつけず、発想に任せます。4年2組の児童たちはマーくんと関わり、「マーくんができないこと」を理解するだけでなく、「マーくんができること」を試行錯誤し、「マーくんとできること」を見つけます。
マーくんも最初は気が進まなかったものの、仲間と一緒に「できた」と感じる経験を積んでいきました。迎えた「スマイルアトラクション」の日は、大きな成長の場となったのです。
文部科学省は、「交流及び共同学習」は障害のある子もない子も経験を深め、社会性や豊かな人間性を育み、お互いを尊重し合う大切さを学べるなど、大きな意義があるとしています。私はそれ以上に、障害のある子の学習や発達面に有意義な活動となることが重要だと考えます。同じ時間や空間を共有して「何となく良い経験になった」の感想にとどまり、障害のある子のことを「何もできない、かわいそうな子で、お世話してあげなければならない存在」といった理解で終わらせないことが大切です。
本書は録音した音声を再生して意思を伝えるツールや車いすで乗り込める福祉車両などがさりげなく紹介され、素晴らしいと思います。ただ、「ぼく」は年下の児童に「マーくん」と呼ばれます。言葉は話せなくても、本人は嫌がっているかもしれません。障害のある人に対して、年齢に関わらず、幼い呼び方をすることが当然のように受け止められないよう、読み聞かせでは意識して伝えることも大切だと感じました。