作者は、野生動物の保護に人生を捧げてきた動物学者です。彼は中央アメリカのベリーズという国で、大型ネコ科動物・ジャガーが虐殺されている状況に深い危機感を抱き、ジャガーを守るため、首相に直接意見を述べる機会を得ます。しかし、わずか15分という限られた時間で、ジャガーの保護区を設立することを説得しなければなりません。
作者は小学生の時、吃音(きつおん)がありました。
「せつめいしようとするけれど、ぼくのくちびるは うごかない。やっぱり、いつものように。なぜなら ぼくには、どもりがあるから。なにか いおうとするたびに、あたまや からだが、どうしようもなく、ぶるぶる ふるえてしまう。」
吃音とは、話し言葉が滑らかに出ない状態です。音を連発したり、引き伸ばしたり、音が出せずに言葉が途切れてしまうなど症状や程度に個人差があります。原因は特定されておらず、全ての人に効果を発揮する治療法はありません。
小学校の特別支援学級で過ごしていた作者は「ぼくって、だめなの? こわれているの?」と思い悩み、自分に対する評価を下げてしまいます。でも、つっかえずに言葉が出せる場面もありました。飼っているハムスター、スナネズミ、カメ、カメレオン、ヘビたちとお話しするときです。
「ぼくには わかる。動物たちには、ぼくの きもちが ちゃんと つたわっている。でも動物は、ことばを はなせない。ぼくの ことばが でてこないのと おんなじように。」
さらに、こう考えます。
「だから 人間は、動物たちの きもちが わからずに、かってに きめつけて、いじめたり、ころしたりする。ぼくを むしして、ごかいして、きずつけるのと おんなじだ。」
そして、ペットたちに約束します。
「じぶんの 声を みつけられたら、ぼくが かわりに きみたちの 声を つたえるよ。そして、動物をきずつけるのを やめさせる。」

そうして大学院で生態学の博士号を取得し、研究者としてジャングルで野生動物の保護活動に尽力するようになりました。
ところで、首相への意見陳述はうまくいったのでしょうか? 子どもの頃に動物たちと交わした約束は果たされたのでしょうか。
この作品は、作者が障害に伴う困難を乗り越え、野生動物保護という使命を果たした姿に焦点が当たるかもしれません。しかし私は、「好き」をとことん伸ばすことで、否定的な自己評価をプラスに変えられること、それには周囲や社会の見方が変わる必要があることを感じます。その大切さに注目してほしいと思っています。