うさこちゃんのクラスに新しい友だちが転校してきました。その子は他の子と見た目がちょっと違い、右耳が垂れてます。
「くらすの みんなは そのこの ことを たれみみくんと よびました。もちろん それは ほんとうの なまえでは ありません。ほんとうの なまえは だーんです。」

生まれつき、あるいは事故や病気などで外見に特徴のある人が、その見た目ゆえに周囲から理解されず、偏見や誤解、差別、いじめなどに直面することを「見た目問題」といいます。
体の部位の欠損、あざ、傷痕、脱毛症、口唇裂・口蓋(こうがい)裂、アルビノ、アトピー肌などの特徴がある人が、「見た目問題」の当事者となっています。
こうした特徴は本来、他者との関係性で問題となるものではないはずですが、人と違う外見を持つ人たちが学校生活や就職、恋愛などで苦労しています。
メディアによる画一的ともいうべき「美しい」「格好(かっこ)いい」「かわいい」などの基準によって苦しんでいる人も少なくありません。
うさこちゃんの隣の席になっただーんは、面白いことをたくさんお話しする楽しい子でした。仲良くなったうさ子ちゃんはある日、だーんに尋ねます。
「みんなが あなたのこと たれみみくんって いうの いやじゃない?」
「うん、いやだよ」「でも、ぼく もう なれてるから。それに みんなが ぼくのことを もっと よく しったら かわるんじゃないかな。」

交流サイト(SNS)の普及で、障害や見た目に特徴のある人が、自分について発信することが増えてきました。多くのフォロワーがいる人もいます。
私は研究で米国に行くたびに必ずおもちゃ屋さんに寄ります。そこには、有名な女の子の人形シリーズに髪の毛や目、肌の色にさまざまな種類があるだけでなく、車いすユーザーやダウン症、そしてLGBTQ(性的少数者)の人形もあります。日本では、このような多様性を表現したおもちゃは見かけません。
「見た目問題」は、見る側にこそ問題があるといえるのではないでしょうか。
うさこちゃんはみんなに「たれみみって よぶのは よくない」と呼びかけます。うさこちゃんのように、何かが間違っていると認識し、発言したり行動したりする人を「アップスタンダー」といいます。誰もがこうした問題に対してアップスタンダーになり、多様性を受け入れ、違いに寛容な社会を築くことは大切です。
子どもだけでなく大人にも大人気のうさこちゃん。数あるグッズには、だーんをモチーフにしたものもあるのですよ。ぜひ調べてみてくださいね。